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NFT のメリットのよくある誤解と、結局なぜ価値があるのか

最近話題の NFT のメリットについて、

  • 改竄できない
  • コピーできない
  • プラットフォームをまたがって共有できる

といった誤解をよく見かけます。

この記事では、

  • NFT の概要
  • よくある誤解に対する回答
  • NFT には結局なぜ価値があるのか

を整理していきます。

NFT の概要

「NFT (Non-Fungible Token: 非代替性トークン)」は、ブロックチェーンに記録される、代替不可能なデータ単位のことです。

ブロックチェーンと言えばビットコインなどの暗号通貨が有名です。 ビットコインは Non-Fungible (非代替可能) ではなく、Fungible (代替可能) な性質を持っています。 どういうことかと言うと、例えば 1 ビットコインを表すトークン A・B があるとき、A も B も同じものとして扱える、ということです。 (厳密には、事実上そのように扱われているだけで、Non-Fungible に扱われる可能性もなくはないです)

それに対し、NFT は Non-Fungible (非代替可能) ということで、「そのトークンが、一点物として意味を持つ」ということになります。 NFT はゲームで一点物のデータを配布することに利用されたりしています。

このあたりについては、以下の資料が分かりやすいです。

Wikipedia も私が見た時点では分かりやすい内容でしたが、誰でも編集できるため、誤解を生む記述が入る可能性もあります。 注意して参照してください。

NFT のよくある誤解

NFT はバズワード的に利用されている側面もあり、広まっている情報の中には誤解も少なくありません。 (あえてそういった情報を広めている可能性も低くないと思います)

そこで、NFT のよくある誤解について整理します。

なお、内容については例えば以下の記事が参考になります。

「改竄できない」は本当か

まず、「NFT はデータを改竄できないからすごい」といった意見を見かけることがあります。

これについては、「NFT のデータが改竄できないかは、NFT の実現方法による」というのが回答です。

前提として、NFT のデータを保存しているブロックチェーンは、「非中央集権で (現実的に) 改竄できない分散台帳」です。 なので、「ブロックチェーンに保存されたデータは改竄できない」という表現は間違いではないです。

ただし、NFT の場合、

  • データがブロックチェーン上に保存される「オンチェーン」
  • データはブロックチェーンの外部に保存される「オフチェーン」

があり、メジャーなのは「オフチェーン」です。

したがって、「NFT のデータは改竄できない」というのはメジャーな「オフチェーン」の場合は誤りです。

「コピーできない」は本当か

たまに「NFT はコピーできないから唯一性を保証できる」といったことを言われるケースがありますが、これは完全に誤りです。

そもそも画像などのデータは、表示しているコンピュータに配布されています。 他のコンピュータから見える時点で、コピー可能ということです。

そもそも、公開されているブロックチェーン上にデータがあったら、むしろコピーしやすいくらいで逆効果です。

仮に実現したい場合は、「暗号化した上で NFT として保存し、復号済みのデータは他人に一切見せない」しか方法はないと思いますが、それなら個人のストレージに保存しておいたほうがずっといいです。

「プラットフォームをまたがって共有できる」は本当か

特に「メタバース」との繋げた話題として、「NFT を使えばプラットフォームをまたがってデータを共有できる」と言われることがあります。

これについては、「NFT じゃなくてもプラットフォームをまたがってデータを共有できる」というのが回答です。

プラットフォームをまたがってデータを使えるかどうかは、

  • データ形式がプラットフォーム独自ではなく、標準的な形式であること
  • そのプラットフォームからデータをエクスポートできること

だけの問題です。

NFT だから、というのは関係ないですし、NFT なしですでに実現されていることです。 例えば Google アカウントに使っているアイコンが、「Google アカウントでログイン」機能でログインした他のプラットフォーム上で表示されたりすると思います。 プラットフォームをまたがったデータの共有というのは、そもそも現代において特別なことではないのです。

強いて言えばデータの管理が中央集権ではないということには意味があるかもしれませんが、正直あまりメリットを思いつきません。

結局、NFT の価値は何か

このように、よく誤解されていることを除けば、NFT にはあまりメリットがないように思えるのではないでしょうか。

私も最初は NFT のメリットがよく分からなかったのですが、一言で言えば「ファン心をくすぐること」です。

先述の通り、アートなどの作品を NFT 化したとして、そのコピーが生まれない保証はありません。

NFT が唯一実現してくれるのは、「あなたがこの作品の本当の所有者です」という記録だけです。 (細かいことを言えば、そのブロックチェーンの外部にも所有者がいたらどうなるの?といった問題はあります)

これは言ってしまえば自己満足ですが、「ファン心」にお金を払うこと自体は非常に一般的なことです。

「これの所有者は自分ですよ」という記録をブロックチェーンという改竄できないプラットフォームで残せること、それが NFT のメリットです。